第10回北海道農場HACCP研究会

農場HACCP研究会に参加しました。

北海道に限らず、本州からも農場HACCPに関わる方たちが集まって、
最新の知識や実際の取り組みを学びました。
基調講演1、赤松ファームクリニック 赤松先生。

農場HACCPの立ち上げから関わって来られた先生です。
そもそもHACCPとは何か?から、
なぜ農場HACCPが発展しているのか、
実践農場の調査結果も引用して
のお話でした。

HACCPとは、
食品の安全性を、製造工程で管理する手法。
起き得る危害を分析して、
起きないためにどうするか、
起きた時にどうするか、
ということを作り込んで行きます。

農場HACCPの発展の要因は、

ガイドラインではなく審査規格であること。
統一性があり、取り組みが第三者に可視化される。

また、分析して終わりではなく、
マネジメントシステムを組み込んでいるため、
経営の中で具体的にHACCPを運用する仕組みになっている。
実践農場では、
経営者の管理能力と
従事者の安全性への意識が向上した。

一方で、生産性の向上には農場ごとに差があり、
改善の余地あり。
農場HACCPだけで万能ではなく、
適切な生産技術を導入し、
運用していくことが必要。

赤松先生は乳房炎改善の技術をHACCPシステムで運用して、
指導農場では衛生的乳質が大きく改善したそうです。

基調講演2、
有限会社 藤井牧場、代表取締役 藤井雄一郎さん。
農場HACCP認証取得から7年間の取り組みを紹介。

この7年間は、
規模拡大や販売ルートの多様化など、
大きく環境が変わった。

頭数増、人員増により、
マネジメントシステムの重要性が増した。

農場HACCPは、
「どのように変えていくか」
を考える時に、
北極星のようにぶれない方向性を示すものだった。
経営判断に一貫性があることで、
一つ一つの問題に対処する際の指針ができて
大きく成長することに繋がった。

人材育成にも力を入れており、
教育、力量評価、報酬を一体化して制度化した。
頑張ったら評価される、また
それを教えた側も評価される。
キャリアアップの指標は明確で、
報酬が上がることで社員のライフプラン形成にも繋がる。

藤井牧場では、
自社単独ブランドの生乳販売をしている。
流通・小売・消費者への責任は重いが、
その分自社の生乳に誇りを持っている。
このようなブランド展開ができたのは、
専用の集乳車、工場ラインを使える規模の生産量があり、
小売側との規模感のマッチがあったため。
メガファーム以外の酪農では、一元出荷の仕組みのために
HACCP認証取得/未取得の生乳が混ぜられてしまう。


取り組み事例紹介では、
3農場から発表がありました。

ブランド化や、自農場での生産体制確立に農場HACCPが有効であるという発表でした。
農場立ち上げや規模拡大に伴って、
自農場での生産体系を整理し、
農場独自の技術を可視化するために、
農場HACCPが効果的に利用されていました。
総合討論では、
人材採用・育成についての話題が出ていました。
こういった組織マネジメントの話題が出てくるところに、
農場HACCPの特徴があると感じました。

また、会場には農業関係者とともに高校生が参加していました。
これからの農業を学ぶ若者は当たり前にHACCPの知識を持つのだと実感しました。
先に現場に出ている関係者は積極的に知識をアップデートする必要があります。

研究会、意見交換会を通して感じたのは、
農場HACCPに集まる関係者の方々の幅広さです。
農場の経営者、従業員、農協、普及センター、
飼料関係、医薬品関係、乳業会社、
システム開発者、臨床獣医師、コンサルタントなど、
多様な業種の方とお話しすることができました。

それぞれが専門知識を持ち寄り、
農業の発展に寄与する。
そのための共通言語として農場HACCPが存在するのだと感じました。

なつみの連絡ノート

北海道、十勝の芽室町で 3人の男児の母と獣医師をしています。 獣医の仕事や、 子どもたちとの生活について などを綴ります。 読んでくれた方と、連絡ノートのように お話をしていけたらいいなと思います。

0コメント

  • 1000 / 1000