歩いてきた道を振り返る、その2

大学生 前半
動物園の獣医になりたい、と獣医学科に入りました。

飼育実習や、動物園ファンの方の集まりに参加して、
どうすれば動物園の獣医になれますか?と聞いていました。

動物園の獣医は、狭き門です。
絶対数が少ないので、
なかなかポストが空かないそうです。

また、獣医学科に入ってから、

・獣医の仕事は臨床(動物の診療)だけではないこと

・獣医の仕事で経済的にやって行こうとするなら、
動物のためではなく人のために働く必要があること

がわかりました。

野生動物が好きだから動物園…
と考えていた私は、
もっと視野を広げて道を選ぶ必要があると感じました。
楽しさを感じて、
人の役に立って、
安定して働けるといいな…と
漠然と考えていました。

大学時代に楽しんでいた遊びは、
旅行です。

勉強しながら、
飲食店でバイトをしてお金を貯め、
国内や海外に旅行に行きました。

太極拳のサークルの活動の一環として
中国に行ったり、
友達とアフリカや台湾、マレーシアに行ったりしました。

世界情勢を知る、とか獣医の仕事とは関係なく、
初めての土地、
初めての食べ物を楽しんでいました。

旅って、
計画を立てるところから楽しいですよね。
空港や、飛行機も好きです。
機内食が好きなのですが、
最近は機内食が出るような
長距離フライトの旅には行けていません。

大学1年生の春に、
北海道の陸別町での重種馬の農家さんとの
交流ツアーに参加しました。

北海道に行ってみたい、と思っていたら、
安い参加費のツアーの募集があった。
行ってみよう!と気軽に行きました。
しかし、このツアー参加後から、
獣医師としてどう仕事をするのか
方向性が少しずつ見えてきました。


重種馬というのは、
農耕作業用の馬で、
体重600kg〜1000kgにもなる大きな種類です。
間近に巨大な馬を見て、
こんな巨大生物ひとが飼えるの!と
驚きました。
種付けを見学したり、
深夜のお産にも立ち会いました。
地元の獣医師が呼ばれて、
お産の介助をするところを見せてもらいました。

農家さんの生活は、
馬の生活と一体です。
そこには、
「動物が好き」という軽い気持ちでは表せない、
迫力を感じました。

農家さんは、
馬の命と向き合って生きている。

動物を生業とすること、
それに関わる獣医師がいることを
実感として理解しました、

家畜の世界も面白そう…と思い始めたきっかけです。
大学生 後半
研究室にも所属しました。
解剖学研究室でした。

卒論のテーマは、
オランウータンの首の筋肉の構造について。

ニッチ過ぎるテーマでした。
純粋な基礎研究(お金にならない)を
経験できて楽しかったです。


4年生になり、
夏休みに実習に行くことにしました。

実習をお願いしたのが、
北海道、釧路の標茶町の家畜診療所でした。
標茶町では、
酪農=乳牛が主な家畜です。
酪農の現場に興味はあったものの、
実際に就職するとまでは考えていませんでした。
しかし、この実習で、
産業動物に目覚めました。

産業動物の獣医師は、
車に薬を積んで往診にいき、
病気の牛を検査し、治療したり、
管理上のアドバイスをします。

難産となれば急いで駆けつけ、
母牛と子牛を助けます。
無事生まれた時には、
農家さんに缶コーヒーを頂いて
喜びを分かち合うこともあります。

しかし、
乳牛は経済動物であるため、
牛の命を長らえることが
農家さんのメリットとなるのか、
慎重な判断が必要とされます。

その判断は、
農家さんに寄り添い、
互いに何を目指すのか理解し合った上で、
最良のものを選びます。

動物のためではなく、
農家さんの経営のために働く。
農家さんのために働くことは、
食品の生産を助け、
それを必要とする多くの人のために働くことに繋がります。

やりがいのある仕事だと感じました。


診療所の先生方には、
業務多忙な中、親切に現場の仕事を教えて頂き、
時には飲み会にも呼んで下さって、
この仕事の醍醐味を伝えて頂きました。



また、北海道の空の広さが、
とても印象的でした。


私の見ていた空は
大抵、
電線や、ビルや、看板が
切り取った後の空だったのだなぁ、と
気づきました。
この実習以降、
産業動物臨床に進む!
と心が決まりました。

他の地域でも実習を重ね、
就職試験、国家試験を乗り越えて、
北海道の東のはじっこ、
根室での獣医師生活をスタートさせました。


予想以上に長くなっております。

次回、獣医師編に続きます。

なつみの連絡ノート

北海道、十勝の芽室町で 3人の男児の母と獣医師をしています。 獣医の仕事や、 子どもたちとの生活について などを綴ります。 読んでくれた方と、連絡ノートのように お話をしていけたらいいなと思います。

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